保育園で勤めていると、保護者さんから「保育園でお薬を飲ませてもらえませんか?」という意見をもらうことが多々ありました。
僕が保育園で勤め始めたころは、保育園で薬を預かるルールもなく、保育園では「絶対に薬を飲ませない」という方向性でした。
僕が園の保健師看護師として、保健室で働くようになり、「少しぐらい薬を預かってあげてもいいんじゃないの?」と思い、薬を預かるようになった経緯があります。
ただ、やみくもに、ルールもなく薬を預かってしまうと、保育園が無法地帯になってしまいます。
今日は、保育園が薬の預かりによって無法地帯にならないようにする方法を、保育園看護師保健師歴もうすぐ20年の僕が、「こうすれば上手く薬を預かることができるよ」という方法をわかりやすくお伝えしていこうと思います。
目次
保育園での薬の預かり ルールの制定
保育園で薬を預かる時には、絶対に一定のルールを作っておかなければなりません。
僕の勤める保育園では、僕がいろんな文献を参考にして、自分の保育園にあったルールを作り、「こうすれば保育園で薬を預かることができる」という形を作りました。
一番参考になったのはこの本です。
薬の預かり票 実例

これが、実際に保護者に渡す、「保育園での与薬について」の説明書きと、保護者に書いてもらう「薬の預かり票」です。
説明書きが短く書かれているのですが、きちんとした文面の預かり票もあり、基本はそちらのルールに従って薬をお預かりしています。
ただ、文章が長くなると読まない保護者もいるので、ショートバージョンとロングバージョンの2種類作っています。
保育園での与薬について 細かいルール
薬の預かり票のロングバージョンに書いてある文章を説明していこうと思います。
保育園での与薬について
保育園では、原則、お薬を投薬しません。
あくまでも「原則」ですからね。
学校感染症に規定されている疾患で、かつ、保育園に行ってもお医者さんに言われている疾患なら大丈夫にしています。
溶連菌感染症なんかはいい例ですね。
他にも「慢性疾患の薬」とかのくだりがありますが、要するに、どんな薬であっても、一度相談してもらえれば、飲ませることができるかできないかを、保育園で考えますよ、と解釈してもらえればいいかと思います。
でも、預かるにあたってのルールはきちんとしておかないといけないので、「薬の預かり票」というものを作って、薬をノートなどに挟まず、直接職員に手渡ししてもらう形をとっています。
保育園でお預かりできる薬について
これは、市販薬を持ってきちゃダメよ、と釘を刺しています。
あまり市販薬を持ってくる人はいないのですが、僕が保育園に勤め始めた頃は、普通に薬局で売ってる咳止めとかを持ってくる人もいてました。
ルールがないって恐ろしいですね。
持ってくる薬の種類について
また、保護者の個人的な判断で持参した薬は保育園では与薬できません。
保育園においては、ここがポイントになると思います。
風邪薬を預かるかどうか問題です。
預かってくれる保育園もありますが、風邪薬を預かってしまうと、結局どれだけお子さんの調子が悪かろうが保育をお願いされるケースがあります。
そもそも、風邪をひいているなら、基本的に保育園をお休みして、療養するのが一番いいと僕は思います。
お仕事をお休みするのは難しいと思いますが、風邪薬を飲むくらい風邪をひいているのなら、できればお休みしてもらいたいですね。
あと、風邪薬は、朝・昼・夕方の処方だけでなく、朝・夕2回とか、朝・夕・寝る前とかで処方してもらうこともできます。
まあ無理をしないのが一番だということですね。
それと、個人的な判断で持ってくる薬に関しては、処方されたばかりの薬ではなく、処方されて何日も経っている薬を、保護者の判断で持ってくる場合があって、それもお断りしています。
座薬の預かりについて
ただし、熱性痙攣の既往があり、止むを得ず座薬を使用する場合は医師からの具体的な指示書を添付してください。
また、座薬の使用については別途『凸凹保育園における座薬使用基準』を遵守の上、『座薬使用依頼書』を提出してください。
座薬の使用も原則行いません。が、あくまで「原則」です。
保護者の要望があり、かつ、保育園側で必要と判断した場合には、座薬を使用することも可能です。
ただし、座薬に関しては、保育園看護師における「グレーゾーン」いわゆる医療行為に当たるか当たらないかのライン上にある問題です。
しかし、グレーゾーンだろうが、目の前に熱性けいれんを起こすかもしれない子どもがいて、看護師として何もしないとなると、歯がゆくて仕方がありません。
なので、僕は預かるようにしています。
ただ、普通の薬を預かるのと違って、座薬の場合には、お医者さんが「この子の保育において、絶対座薬が必要」との診断書と、薬の預かり票を合わせた形でないとお預かりしていません。
細かいルールに関しては、ここで書くと長くなるのでまた別のところに書きます。
外用薬(塗り薬・目薬)について
外用薬は、塗り薬や目薬なんかですね。
塗り薬に関しては、アトピーとかで明らかに肌がカサカサの場合には預かるようにしています。
そんなに症状がひどくない場合には、保護者にお家でこんなふうにすればいいよとアドバイスをしたり、園にあるワセリンを塗って対処することもあります。
目薬は、流行性角結膜炎とかは出席停止になるので預かることはまずないのですが、軽い結膜炎だったり、めばちこ(標準語:ものもらい)の場合はお預かりします。
ただ、花粉症とか正直に書かれると、花粉症ではお預かりできませんとなってしまいます。
持参する薬について
①薬には必ず『薬の預かり票』を添付してください。原則1日1枚提出してください。用紙は事務所に置いてあります。
②使用する薬は1回ずつに分けて当日分のみご用意ください。
③袋や容器にお子さんの名前を記載してください。
薬に関しては、必ず、薬の預かり票とお薬を職員に手渡ししてもらうというのが絶対条件になります。
書いてある通りなんですが、薬は1回分のみ持ってきてくださいということで、薬には子どもの名前とクラスを記入してねと書いています。
なぜ手渡しかというと、万が一ノートとかに挟んでいると、職員間の連携が取れていないと、ノートに挟みっぱなしになっていたり、全然違う薬が入っている可能性もあります。
なので、手渡すと同時に、「こういう薬なんで~」と保護者に説明してもらうとベストですね。
医師の診察を受けるとき
これは、風邪薬のところにも通じるものがあるのですが、原則、薬はお預かりしない方向でいきたいのです。
じゃないと、本当に体調が悪くても保育園に連れてくる保護者さんや、薬さえ飲ませておけば何とかなると思っている保護者さんが多いので、基本、お家で何とかできるなら、なんとかしてくださいという意味で載せています。
薬預かりの際の責任の所在
保育園でお薬は飲ませるけど、薬を飲ませたことにおいて責任は一切取りませんと書いています。
実際、薬を預かって飲ませることは、多少なりと保育園側がリスクを負うものです。
そこで、薬でアレルギーが出たとか、この薬を保育園で飲ませたから〇〇になった、と言われたとしても、先の薬の預かり票があるので、一応保護者さんもリスクがあるということを理解して薬を預けてください、という意味合いが込められています。
保育園で薬を預かる まとめ
「薬を飲ませなければいけないほど調子が悪いなら、保育園に預けるな」という意見もありますが、そう簡単に仕事を休めたら親なんかやってられませんよね。
僕は、保育園看護師でもあり、自分の子どもを保育園に預けている父親でもあります。
実際、自分の子どもの保育園でもお薬を預かってもらえるので、親としては有難いな~と思い、安心して仕事することができます。
もちろん、最後の文章で、保育園側が「責任を負いません」と書いてあっても、保育園側が責任を負わなければならないのが現実です。
なので、保護者さんにも、理解を持って薬を預けてもらえればいいな~と思っています。
冒頭に紹介した本ですが、初版が2000年発行になります。
いまでも保健活動に通用する本なので、愛用していますが、
こちらは、2019年後半に発行された、保育園看護師・保育園保健担当保育士の新しいバイブルとなる本です。
僕もすぐ注文して職場の本棚に並んでいます。
とても保育園保健活動に役立つ本ですのでオススメです。
しかし、溶連菌感染症などの学校感染症に規定されている疾患や、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患の薬に限り、保護者と保育園側で話し合いの上、保育園の担当者が保護者に代わって与薬します。
この場合は、万全を期すために右の『薬の預かり票』に必要事項を記入していただき、薬と一緒に手渡ししていただきます。